2008年1月22日火曜日

クリスピンポーターボガスキー②

本日はCP+B特集の2日目。
CP+Bが大躍進するきっかけになった
フロリダ州アンチたばこプログラム
「truth(真実)」キャンペーンの事例。

このキャンペーンは1999年の
「APG USアワード」という
アカウントプランニングの広告賞で
「金賞」を受賞しています。

「truce」キャンペーンの中には
優れたCMがたくさんあるのですが、
YouTubeで発見できませんでした。
「CP+BのHP」で何本か見られますが、
本当に面白いCMはなぜかアーカイブされてないので
本日は文章中心になってしまいますが
ご了承ください。
関心がある方は、後でご覧いただけますか。
↓「CP+B」HP→truceをクリック
http://www.cpbgroup.com/

まず先に「truce」戦略を簡潔にお伝えしますと
非常にシンプルですが、
『CP+Bは「嫌煙」を若者たちの間で
「スタイル」に仕立て上げた』
というのが戦略です。
優れた戦略は往々にしてシンプルです。

例えば以下のTシャツは「truceキャンペーン」の
プレゼント用として制作されたものですが、
屋内では普通のデザインなのに、
太陽の下に出ると特殊インクで書かれた絵柄が現れて
「8秒ごとにタバコが原因で一人死んでいます」という
メッセージに変化するという変則Tシャツです。




この表現例そのものは、
めちゃめちゃ斬新というわけでは無いですし
最終的な戦略は「嫌煙をスタイルにする」という
シンプルなものではありますが、
この「truce」キャンペーンの根底にある
「アカウントプランニング」戦略は
きわめて優れています。

ということもございまして 、
博報堂から出版されている雑誌「広告」の
バックナンバーの特集からの引用を中心に
CP+Bの様々なインタービューなどから抜粋して
「クリエイティブブリーフ」形式にアレンジしてみました。
(「クリエイティブブリーフ自体の特集は、いつかやる予定です)
※この「クリエイティブブリーフ」のフォーマットは、
 個人的に勝手に作ったものです。

CP+Bの様にクレイジーな広告をつくる会社は、
とかく「表現」だけで判断されて誤解されやすいですが、
最終的なアウトプットである「広告表現」は
あくまでも「表面的」な「氷山の一角」にすぎず、
その背景にある目には見えない「戦略」「インサイト」
「アドアイディア」が重要ですので、
「内視鏡」を入れて表現の奥底に潜む「戦略」を
分析してみます。

以前ご紹介させて頂いたジョンスティール氏著の
「アカウントプランニングが広告を変える」によれば・・・
クライアントは鼻ピアスをした20歳そこそこの若造の
「大丈夫。マジでカッコイイっす」の一言に、
マーケティング予算、市場シェア、収益性、株価、
果ては自分自身のキャリアをも賭けてみようとは思わない。

というクライアントインサイトもあると思いますし。

以下が「truce」キャンペーンの
クリエイティブブリーフ(仮)です。

◆広告をするに至った背景
1998年フロリダ州政府は、
タバコメーカーから得た示談金2億ドルを財源に、
それまでどの州でも成功したことのないティーンズを対象とした
フロリダ・アンチタバコ・プログラムに
着手することを決定した。

①Objective/広告目的
『10代の喫煙率を低下させる』
全米において一日に3000人の子供たちが喫煙を始めている。
そして実にその3分の1が最終的に喫煙が原因で命を落としている。
広告の力によってこの状況を変えたい。

②Target/ターゲット
『フロリダ州の男女中高生』

③Target Insght/現状のターゲットの心理・インサイト
『タバコを吸うことで「反抗心」がアピールできる』
と思い込んでいる。
・ティーンズにとって喫煙は
 AIDS、SEX、ドラッグ、校内暴力のような
 大きな問題とは捉えられてない。
・喫煙は10代の子供たちの反抗心や自己表現と
 結びついている。
・彼らがタバコを手にするということは
「今、自分は人生を自分自身でコントロールしている」
 ことを表現する実に簡単な方法である。
・健康的な脅しも、人生的にかなり先の話なので
 無軌道で若い彼らにとってピンとこない。
・何しろ上から命令するような言い回しは
 若者たちにとってはむしろ逆効果である。
・そして「不健康さ」が逆にクールであると思っている。
・それまでの広告は以下の3パターンの類型にハマり込んでいて
 大して効果を上げていなかった。
①「タバコをやめよう」など一方的な願望を押し付けるだけの広告
②ガンになるとか肺が真っ黒になるなどの「脅し」広告
③タバコをやめたら爽やかな生活になるという広告
この3つの広告話法のみに陥っていたという点が
この業務における「コンベンション(慣習)」だと思います。
◆Key Insight/最も重要な心理・インサイト
『10代の子供たちのブランド志向と反抗心』
「大人というのは嘘つきで私たちをごまかそうとする存在だ」
という年頃の子供なら誰もが抱く猜疑心の周辺。
一方でタバコをクールなものとして宣伝しておきながら、
その同じ口でタバコを吸うなと説教がましく言う大人を、
どうやって信用しろというのか、という心理。

④Perception Goal/ターゲットに新たに与えたい意識
『「タバコを拒否する」という行為を、
 彼らの反抗心をかきたてるようなブランドに仕立て上げる』



⑤Proposition/③な人を④に変える決定的な訴求点(1つ)

『タバコ産業は大人が操っている
 欺瞞に満ちた産業であり、反旗を翻すに値するものだ』

若者が大人たちへの反抗という
スタイルとして吸っているタバコそのものが
タバコ産業という大人たちが作り出したもので、
彼らは単に踊らされているだけだ。
そこに気づいて反旗を翻そう。

⑥Execution/表現戦略
『その欺瞞のカーテンを暴き、
 彼らが知るべきことを明らかにする運動を
「truth(真実)」と名づけブランド化することにした』

⑦Support/⑤が有効である根拠・裏づけ
『忘れがちだけど若者がクールと思っているタバコ産業は、
 オジサンたちが仕切っているビジネスだという
 純然たる事実がある』
・若者は「クールでない」ことには耐えられない。
・同時に「広告」という存在そのものもウソくさいけど
「truth」という 真実に基づいた広告キャンペーンは
信用でき無くは無い感じがする。

⑧Tone&Manner/⑤をどの様な「印象」で伝えると効果的か
『事実に即した「クール」で「反抗的な」表現トーン』
若者にスタイル化させるために、
ヘンに若者に媚びた表現ではなく、
事実に即しつつ、押し付けがましくないトーン。

⑨MediaStrategy/⑤を「いつ」「どこで」伝えると効果的か
『4マス媒体だけではなく街でのムーブメントに見える様に
「OOH」や「イベント」「バイラル」も重視』
10代による反タバコサミットの開催に始まり、
10か月の間にTVCM、
7つの屋外ボード、
8つのプリント広告、
4つのポスター、
ポストカード、
インターネットホームページによって展開。
またティーンズ向けのイベント会場で
Truthロゴ入りのTシャツや帽子、ステッカーなどが配られた。


⇒【このtruceキャンペーンによる結果】
周囲の「実効には時間がかかるだろう」との観測を裏切り、
90年代に全米で73%にまで上昇し続けてきた喫煙率が、
10ヵ月に高校生で8%減、中学生で19%減という
画期的な減少として表れた。
そして当時のクリントン大統領は
どの州でも なし得なかったこの快挙を称え
「フロリダでの成果は、全州でも実施するに値する」との
コメントを寄せることとなった。



※日本では国民性も違うので上記のブリーフとは
 違うブリーフになる可能性が高いと思います。

明日は「truceキャンペーン」の後、
CP+Bがさらなる大飛躍をとげるきっかけとなった
BMW「MINI」のキャンペーン事例です。

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