2008年5月13日火曜日

メディアニュートラル②

メディアニュートラル特集2日目の本日は、
メディアニュートラルの「阻害要因」に関してです。

まずは一見関係無い事例に見えるかもしれませんが、
世界で最も巨大な広告エージェンシーグループ
「WPP」のCEOで「サー」の称号をもつ
「マーチンソレル」氏に関して。

【Sir Martin Sorrell】


ソレル氏は元々イギリスの大手広告会社「サーチ&サーチ社」の
財務担当者をされていましたが1985年にWPPに入社。
ちなみにWPPとは「Wire & Plastic Product」の略で
驚くことに本来は「買い物カゴ」を作る会社であり(かなりシュール)、
その「広告と無関係」な「買い物カゴ会社」を拠点に
ソレル氏が中心となり次々と巨大な「広告会社」を買収を開始。
1987年にJWTグループ(旧JWトンプソン)、
1989年にO&M(オグルビー&メイザー)ワールドワイドを
買収してWPPを超巨大なメガエージェンシーに変貌させ、
その後の世界的なメガエージェンシー競争に火をつけました。

【買い物カゴ】


その「サーマーチンソレル」氏は以前以下の様な発言をしていました。

「ブランドを束ねてハーモニーの取れた共同作業をさせるのは
至難の業だと認めざるを得ない。
それがWPPの抱える最大の問題だ」


「広告会社」の各部門間の「セクショナリズム」により
クライアントの複数ブランド間の「トーン統一」および
消費者の実態に即したメディアニュートラルな提案が
かなり困難であるということを言っている様に思います。

どこの広告会社の組織も大小関係なく
大半が機能別に分かれていて、
しかもそれぞれの部署がプロフィットセンター(P&L)に
なっています。各部署は当然それぞれの領域を守ろうとするのは
自然な流れだと思います。

メディアの話ではありませんが、広告会社の中で
例えば広告表現を制作する際に、
「マス広告での表現」と「セールスプロモーション」の
「表現を連動する」という一見なんてことない様なことさえ
かなりの労力が必要だったりすると思います。
それだけ組織の部門間の壁というのは一筋縄ではいかない
ものであると思います。

また「作業効率」の問題もあると思います。
今まで、テレビを中軸にしたメディアプランで
成功してきたのに、今さらわざわざ広告費を下げて損してまでも
多分野の異なる媒体にまたがる「大変な作業」をしたくない
という広告会社のオペレーション効率上の問題もあると思います。

本当の意味でメディアニュートラルになることは、
広告会社にとって、かなり大変なことなのだと思います。

しかし現在の広告界を取り巻く“変化の波”は
以下の様に凄まじいと思います。
①マーケットの変化「成熟市場」
 どんなマーケットも飽和化して競合ブランド間の「差別化」が
 困難になってきている。
②消費者の変化「情報洪水」
 消費者が接触する情報が多すぎてほとんど無視されてしまう。
 消費者の懐疑主義→広告の信用度がそれほど高くなくなっている。
③メディアの変化
 インタラクティブメディアの台頭によるメディア接触時間の分散化。
 TVの視聴率低下とHDDレコーダーの出現によるCM飛ばし問題。

とはいえ日本人は世界的に見てもメディアに対して
受動的に接触している人が多いという話を聞いたことがありますが
確かに大量の媒体出稿による「パワーマーケティング」の
影響を受けやすい気もします。
私自身、テレビでたくさん見かける物を買ったりすることは
結構多い気がします。

今後もマス媒体を大量に使用した広告キャンペーンは
たくさん存在すると思いますし成果も出していくと思いますが、
「クライアントの業種」や「広告の目的」によっては
イベントやPRまでも含めた緻密なメディアプランニングによる
「メディアニュートラル」なキャンペーンの必要性も増す気がします。

そしてメディアニュートラルなキャンペーンは、
媒体量でひれ伏すタイプでは無いため、キャンペーンの
中軸となる「インサイト」および「クリエイティビティ」が
重要になる気がします。
出稿量が少ない分「面白い」必要があるのだと思います。

個人的には、メディアニュートラルな提案の阻害要因と思われる
広告会社の「セクショナリズム」と「作業効率」の解決策は、
組織間の壁を壊した「流動的な組織」および「フィー」や
「成功報酬制」の確立がカギになると思っています。

「人は自分が成功したやり方で失敗する」という
名言を聞いたことがありますが、
私自身、環境が変化しているのに昔の教訓に引きずられて
失敗するということが多々ありますが、
過去を過剰に引きずってしまう「心理バイアス」と
戦っていかないと環境の変化に対応した効果的な広告は
つくれない気がします。

消費者の「真の購入動機」を「インサイト」する
「アカウントプランニング」を軸にして
様々な角度からの立体的なブランド像を構築する
「メディアニュートラル」な提案および
それに適した組織づくりが重要になると思います。

明日は1980年代のアメリカで「アカウントプランニング」
および「メディアニュートラル」の革命を起こした
シャアットデイ社の事例です。

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